合計が一致しても内訳は分からない

入金照合の確認として、いちばんよく使われるのが合計の突き合わせです。 銀行に入った金額と、作った仕訳の合計が一致すれば終わり、という手順です。

この手順には穴があります。ある項目から別の項目へ同じ金額を移しても、合計は動きません。 つまり分類を間違えても合計は一致したままです。

合計の一致が示すのは「総額を取りこぼしていない」ことだけです。 「正しい科目に入っている」ことは示しません。 この2つは別の検査であり、前者は後者を含みません。

逆向きの誤解も起きます。合計が一致しないとき、原因は必ず「金額の漏れ」だと考えてしまい、 分類の誤りを探さないことがあります。合計の不一致も、合計の一致も、内訳については何も言っていません。

同じ金額で、まったく違う帳簿になる例

入金 100,000 円が、売上 50,000 円と調整 50,000 円で構成されていたとします。 取得の途中で売上を2回数え、調整を取りこぼすと、次のようになります。

入金額との合計は一致しているため、合計だけを見る手順ではこの誤りは見つかりません。 しかし帳簿上は売上が 50,000 円過大で、調整の記録が消えています。 消費税の課税売上も、その分だけ過大になります。

この誤りが起きるのは、金額が同じ2つの項目が入れ替わったときです。 金額が同じであるほど見つかりません。 合計という検査は、まさにそのときに無力になります。

入金1件ごとに確かめる4つの点

合計の代わりに、明細1件ずつについて次を確かめます。いずれも合計では分かりません。

1. 同じ明細を2回数えていないか

取引の識別子が重複していないかを見ます。重複していても、別の項目が同額で欠けていれば合計は一致します。

2. その明細はこの入金のものか

Shopifyの残高取引は、どの入金に組み込まれたかを示す項目を持ちます。別の入金のものや、まだどの入金にも組み込まれていないものが混ざると、期間がずれます。

3. 分類が決まっているか

見たことのない取引種別が1件でもあれば、その入金の仕訳は作れません。「たぶん売上」で寄せると、合計は合ったまま誤りが固定されます。

4. 通貨が混ざっていないか

通貨が異なる明細を足すと、合計そのものが意味を持ちません。一致したとしても偶然です。

4点はいずれも「金額が合っているか」ではなく「足し合わせてよい明細がそろっているか」の検査です。 順序としては、こちらが先にあります。

返金しても手数料は戻らない

内訳の確認でとくに漏れやすいのが、返金に伴う手数料です。 Shopify公式のヘルプには、返金を行っても一部の決済手数料は戻らないと記載されています。 原文では次のように書かれています。

Some payment provider fees and credit card third-party transaction fees aren't returned to you when you issue a refund.

Any third-party transaction fees that have been charged aren't refunded.

したがって注文を全額返金しても、その入金には手数料が残ります。 「返金したので売上も手数料も打ち消し」として処理すると、残った手数料の分だけ合計が合いません。 逆に、合計を合わせるために手数料を売上の値引きへ寄せると、 今度は合計は一致したまま内訳が誤ります。

この記事で確認できていないこと

上の4点は、実際のShopifyのデータで起きると確認したものではありません。 Shopifyが誤った明細を返すという意味ではなく、 取得や集計の過程でこうした誤りが起こりうるため、確かめる価値があるという主張です。

  • ページングの際に同じ取引が重複して返ることがあるかは、実データで確認していません。
  • テストモードの取引が本番の入金に混ざることがあるかは、確認していません。混ざらないとする第三者の記述もあります。
  • 各項目の実際の分布(どの取引種別が現れるか)も、実データでは確認していません。

確認できているのは「合計の一致は内訳の正しさを示さない」という足し算の性質と、 上に引用した公式の記載です。前者は実データに依存しません。

確認できたことと、確認できていないことを分けて書いています。 入金照合は、合っているように見える状態がいちばん危ないためです。

この確認を自動で行うプロダクトを開発中です

合計だけでは確かめられない方へ

Kaikeiは、入金1件ごとに上の4点を検査し、 確かめられなかった場合は仕訳を作りません。 合計が一致していても、内訳が信用できなければ止めて差額の内訳を出します。 マネーフォワードの実API操作は確認済みですが、実店舗の入金での照合はまだ実証できていません。導入実績は0件です。

無料で先行利用に申し込む

参考にした公式情報